カミツキレイニー 『それでも異能兵器はラブコメがしたい』 (スニーカー文庫)

それでも異能兵器はラブコメがしたい (角川スニーカー文庫)

それでも異能兵器はラブコメがしたい (角川スニーカー文庫)

二〇一九年二月十四日。その日、人類は月の一部を失った。

――が。

それはそれとして置いといて。

この物語は、SFでも異能アクションでもなく、あくまでもラブコメと注意されたし。

――普通の子みたいになりたいな_(:3」∠)_

辰巳千樫は,市ヶ谷すずが好きだ.初めて好きになった2011年,突然の別れとなった2016年.そして月がかじられた2019年.3年ぶりにすずに再会した千樫は,遠回しなアプローチを繰り返す.そして初めてのデートとなった池袋で,千樫はすずを狙ったテロに巻き込まれて命を落とす.

「異能兵器」である少女は,ラブコメのような学園生活を送ることを望んでいた.『最終兵器彼女』のような設定から始まる,東武東上線沿線を舞台にしたラブコメ.引用部分でも言っているように「あくまでもラブコメ」として書いてるのが面白い.記憶を消され,テロに巻き込まれ,人間ではなく「異能兵器」として扱われるけれど,誰も死なないし,なんかドタバタしている.なんというか,セカイ系異能バトルの持つ辛気臭さを,ラブコメの文法でいかに昇華できるか,みたいな実験精神と力強さを感じた.世界に5人しかいない異能兵器が3人も集まっちゃっただとか,あっさりテロを許してるんじゃねーよとか,ラブコメにしてもご都合主義が少々強めなのが気になったところ.なんだかんだと悪くない.続きを楽しみにしてます.