酒井田寛太郎 『ジャナ研の憂鬱な事件簿3』 (ガガガ文庫)

ジャナ研の憂鬱な事件簿 3 (ガガガ文庫)

ジャナ研の憂鬱な事件簿 3 (ガガガ文庫)

「俺ができるのは、せいぜい、推理することぐらいです」

啓介は自嘲のつもりで言った。

しかし真冬は、まっすぐに啓介の目を見て、「いいえ」と返した。

「その推理のおかげで……私たちは、道を拓けたのです」

曽祖父が遺した自画像に隠された秘密を探る「自画像・メロス」.祭りの夜に森に浮かんだ「鬼の貌」の正体.小学生のころに感じた恐怖心の理由を探る「怖いもの」.海新高校ジャーナリズム研究会,略してジャナ研の啓介と真冬が遭遇した日常の謎短篇を三本収録した青春ミステリの第三巻.今回は短篇ごとに自作解題もついていて,今まで以上に創元推理文庫っぽさを増していると思う.嫉妬や欲望といった後ろ暗い気持ちを掘り起こしてゆく,「憂鬱」な小説であることは変わらないのだけど,そこに伴う気持ちには少しずつ変化が起こっているのかな.引き続き追いかけたい所存です.