かめのまぶた 『エートスの空から見上げる空 老人と女子高生』 (ファミ通文庫)

エートスの窓から見上げる空 老人と女子高生 (ファミ通文庫)

エートスの窓から見上げる空 老人と女子高生 (ファミ通文庫)

「過去を変えることができないのは、救いだよ。アタシたちは未来に進むしかないようにできてる」

その言葉に、あたしはやっぱり、素直に首肯することができなかった。そう言い切るには、あたしたちは、あまりに過去に囚われすぎているように思えた。

女子高生を愛し,太ももを愛し,でもクラスに友達のいない女子高生,瀬宮憂海.学校で居場所を求めてさすらった彼女がたどり着いたのは,半地下になった廊下の端.だがそこにはすでに先客,老物理教師の豊橋厳蔵がいた.ふたりは半地下の窓から見える女子高生の太ももを並んで眺める昼休みを送ることになる.

「ジジイとJKの甘くも酸っぱくもない青春謎解き相談」を描く,第19回えんため大賞ライトノベルファミ通部門特別賞.定年過ぎのジジイと太ももや青春の悩みについて語り合いつつ,先輩の行動の謎や,密室から消えたパリピ部部長を追う.ざっくりと分類するなら青春ミステリというか,日常の謎になるのかな.ネガティブさと軽快さが入り混じったテンポの良い一人称は読んでて小気味よい.どことなく石川博品とか,石黒正数のような不思議なテイストを感じる.石川博品が推薦文を書くのもよく分かる.読み口は軽いけど,これはかなり良い青春小説なのではないでしょうか.楽しませていただきました.