砂義出雲 『寄生彼女サナ』 (ガガガ文庫)

寄生彼女サナ (ガガガ文庫)

寄生彼女サナ (ガガガ文庫)

「世代を超えて、腸越えて! 腹から飛び出て宿主を守る!」

少女は、すうと息を吸い込んでからにっこりと笑って言った。

「日本海裂頭条虫のパラシスタンス、サナだ! 突然だが、今日からお前の腹に寄生することになった。よろしくな!」

平凡な高校生だった僕は,ある日腹を裂かんばかりの強烈な腹痛に襲われる.実際に腹を裂いて現れたのは,全裸の美少女,サナだった.彼女は知性を得た寄生虫,パラシスタンスであるという.

第5回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作.寄生(parasite)と実存(existence)のかばん語,実存寄生(parasistence)を思いついた時点で勝利は約束されたようなもの.自我とは,実存とは何ぞ.あまねくひとは環境に寄生し,環境から寄生されて生きている.そして寄生する者が持つ「原罪」とは.みたいな方向のテーマを,ドタバタストーリーにわかりやすく簡潔に絡めているのが楽しい.前半はただただテンションがくどく,いかがなものかと思ったのだけど,そこから後半に向けて想像した以上に楽しんでしまった.今まで積んでたので続き買います.