松村涼哉 『1パーセントの教室2』 (電撃文庫)

1パーセントの教室2 (電撃文庫)

1パーセントの教室2 (電撃文庫)

この教室はとっくに狂い始めているんだ。

これから不幸になるひとを好きになってしまう“死神”日比野明日香に,雨ケ崎誠也が見初められてから一ヶ月が経った.彼女の助けによってなんとか災難をやり過ごして来た誠也だったが,演劇部の倉庫が全焼する事件に巻き込まれ,入院する羽目になる.事件の裏には,演劇部員をはじめとした様々な思惑が渦を巻いていた.

その少女に好かれた相手は99パーセント不幸になる.生き残るための1パーセントを目指してもがいてゆく高校生を描く学園ミステリ.ひとを操るという「祭」と,九尾の狐と帝の伝説の「見立て」をキーにした謎の組み立てもさることながら,演劇部員たちの描写がとても良かった.最初は友好的だったのに,裏の顔を持ち,いつの間にか話す理屈がおかしくなってゆく.本人たちはその理屈のおかしさがわかっていない.言葉は通じるのに,話がまったく噛み合わない相手がいかに気持ち悪くて恐ろしいかを存分に見せつけられる.

そこからの後半.「あまりに人として終わっている」黒幕を追い詰め,説得する方法が力技すぎてちょう楽しい.よりによってそれか! という落差からくるカタルシスがすごすぎて笑ってしまった.ちゃんと説得力があるし,良い意味で脱力する.ひたすら暗黒ミステリだったデビュー二作に比べると妙にユーモアもあるし,良い感じに力が抜けてきているのではないでしょうか.今後も楽しみにしております.


kanadai.hatenablog.jp