周藤蓮 『賭博師は祈らない④』 (電撃文庫)

賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)

賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)

「賭博師は勝たない」「賭博師は負けない」「賭博師は祈らない」。その三つの決まり事はつまり、ラザルスという名前を持つ人間の根本的な定義そのものだ。

そして、それらはもう虚しい繰り言と化した。

ラザルスたちがバースでの長逗留から帝都に帰還した.それまでの活躍によってすっかり有名人になってしまった“ペニー”ラザルス.望むと望まざるにかかわらず,警察権力と裏社会による帝都の権力争いに否応なしに巻き込まれてしまう.

舞台をバースから帝都に戻してのシリーズ四巻.フィールディング判事によって設立された私設警察組織ボウ・ストリート・ランナーズ.裏社会の支配者ジョナサン・ワイルドの二代目ジョナサン・ワイルド・ジュニア.その権力争いに立ち向かうかつての恋人同士,ラザルス“ペニー”カインドとフランセス“ヴァージン”ブラドックのふたりの賭博師.相変わらず,イギリスおたくが好き勝手に設定を盛り込んだようなノリノリの小説だと思う.本編もさることながら,あとがきからも「オタクの早口感」がビシバシ感じられて楽しい.ぼくの考えた最強の18世紀末,みたいな.

もちろんそれだけではなく,破滅と紙一重の緊張感を終始倦むことなく描いていると思う.日常と,事件と,ゲームの場面.それぞれに緊張感があって,カタルシスがある.「次巻で本編完結予定」なのがもったいない気もするけど,予告した上で完結を迎えられる小説のほうが今では少ないくらいだし,モチベーションが高いまま完結を見せてくれるのは楽しみ.お待ちしております.