野﨑まど 『バビロン III ―終―』 (講談社タイガ)

バビロン3 ―終― (講談社タイガ)

バビロン3 ―終― (講談社タイガ)

「神様のものだから奪うのは駄目というのは、わかるよ」オリバーは考えを言葉に変えていく。「けれど納得しきれない感じもする。僕が“神様のものだから自殺は駄目だ”って説明しても、きっと友達を納得させられないと思う。なんというか、考えることをよそに押し付けた感じがするんだ。答えが出ていないのに、考えるのをやめてしまっている気がする」

“新域”で発令された「自殺法」.その影響は世界中に伝播し,新法に追随する都市が各国に現れはじめた.米国大統領は自殺の是非について話し合うべく,ニューヨークでのG7開催を決定する.その裏で,新域域長の齋開化は,自殺法を導入した都市の首長を集めた「自殺法都市首長会議」の開催を宣言する.

世界各国の首脳が集まったサミット.世界最高の指導者たちによって答えが出される「善」と「悪」の本質.それをあざ笑うかのように訪れる最悪の「終」.舞台を日本からアメリカに移して描かれるシリーズ第三巻.

時代が変われば価値観も善悪の基準も変わる,ではその根っこにあるものとは何なのか.概念的なものとは言え,変にごまかさずにひとつの答えを導き出すのがすごい.考えることに対する真摯な姿勢が垣間見える.本当に大傑作だと思います.