岩城裕明 『呪いに首はありますか』 (実業之日本社)

呪いに首はありますか

呪いに首はありますか

相談者である男は一度唾を飲み込むと、

「それが、うちに幽霊の死体が出るんです」

そう言った。

「なるほど」と恵介は頷きかけて止まる。「幽霊の死体ってなんですか?」

久那納家には,長子が三十歳までに必ず死ぬという呪いがかけられていた.28歳の久那納恵介は,「心霊科医」を名乗って相棒で幽霊の墓麿とともに怪しいクリニックを運営している.呪いを解く方法を探すため,ふたりは霊に関する相談を解き明かしてゆく.

ホラーミステリの連作短篇集.幽霊の死体が出るだの,他人に見えないはずの幽霊が誘拐されただのといった,ともすればのんきにも見えるおかしな心霊相談が,やがて短命の呪いの真実に近づいてゆく.短篇ごとのネタに対する目のつけどころもさることながら,ユーモアのある語りから異様な着地点への自然な誘導が良い.毎度うまいと思う.

短篇ひとつひとつが伏線になり,少しずつ明かされる真実がラストに向けて収束する.連作短篇の醍醐味は十分.表紙の意味が明らかになってから,他にどうしようもないラストに至るまでの切なさ,強烈なやるせなさは胸に来るものがある.良いものだと思います.