内堀優一 『笑わない科学者と時詠みの魔法使い』 (HJ文庫)

笑わない科学者と時詠みの魔法使い (HJ文庫)

笑わない科学者と時詠みの魔法使い (HJ文庫)

知るということは、明日に繋がる何かを得ることだ。

知ろうとすることは、明日へと今を繋げていく行為だ。

明日へと繋げていこうとする時、人は不安や絶望から僅かでも解放される。

物理学を専攻する大学生,大倉耕介は,教授から「魔法使い」の少女,咲耶を紹介される.学費が尽き,大学をやめることを考えていた耕介は,咲耶と同じマンションで世話をしつつ暮らすことを提案される.

第3回ノベルジャパン大賞奨励賞受賞の,物理学者と魔法使いの凸凹同居生活.このテーマなので「魔法を物理的に解釈する」みたいな話なのかな,と思っていたらさにあらず.「柔軟な感性」を持ったふたりが,お互いの立場を尊重しそのままの姿で理解しようとする.知識と柔軟性と想像力が理想的な像をむすぶ,優しい小説だと思う.出版から8年以上経ってるけど古びた感じがしない.良いのではないでしょうか.