飴村行 『粘膜探偵』 (角川ホラー文庫)

粘膜探偵 (角川ホラー文庫)

粘膜探偵 (角川ホラー文庫)

「これがナムール国に古くから伝わるグズルウや」

「グズルウ?」

戦時下の帝都.トッケー隊への入隊を果たした14歳の少年鉄児は,先輩のやらかしに巻き込まれて入隊早々に謹慎を食らってしまう.隊の汚名返上に燃える鉄児は,帝都で噂となっていた保険金殺人事件の解決を目論む.

6年ぶりの「粘膜」シリーズ新刊.「探偵」のタイトルのとおり,今回はミステリの風味がやや強め,の気がする.ナムール国から持ってきた「月の御柱」の生態の謎や,変な愛嬌のあるへルビノの絡む事件を,怒涛のテンポと緊張感で描いてゆく.一時間以内に三人を殺さなければならない状況に陥るクライマックスといい,よくわからないなりに妙なかっこよさのあるラストといい,幻想的なだけでも悪夢的なだけでもない独特の読み心地のある小説であることよ.シリーズ中では『粘膜蜥蜴』に次いで良い読後感でありました.



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