乙野四方字 『ミウ -skeleton in the closet-』 (講談社タイガ)

ミウ -skeleton in the closet- (講談社タイガ)

ミウ -skeleton in the closet- (講談社タイガ)

「さて」

芝居がかった仕草で本当にそう口にしたミユは、少しの間沈黙して、あたしにはにかんだ笑みを向けてみた。

「一回言ってみたかったのよね、これ。でも思ったより恥ずかしいわ」

卒業と就職を目前にした大学生の池境千弦は,実家でたまたま手に取った中学の卒業文集である文章を目にする.一ヶ月で引っ越していった元同級生が,いじめを告発したノートを学校に隠していったのだという.興味を惹かれて検索をした千弦は,元同級生のSNSアカウントを見つけるが,その同級生は「自殺します」という言葉を二年前に残して更新を止めていた.

SNSアカウントの乗っ取りによる死者の再生,同級生の不可解な死,自分の進路を決定づけた同級生との再会.灰色の,何も感じることのなかった日々が大きく変わろうとしていた.病的なけれん味の利いた,小説家と編集者の百合ミステリ.登場人物全員がどっかしらおかしいし,いかにも講談社らしい雰囲気がある.帯の煽りはないほうが良かった気がするが.さっくりと楽しませていただきました.