一肇 『フェノメノ 陸 美鶴木夜石は微笑まない』 (星海社FICTIONS)

フェノメノ 陸 (星海社FICTIONS)

フェノメノ 陸 (星海社FICTIONS)

怪物――さて、怪物とは何だろう?

火を吐く? 人を喰う? 常人では抗うことも出来ない超常的な力を持つ? まあ、その定義など、人によっていいろいろだろうけれど、ひとつだけ確実に言えることがある。一度、出逢ってしまったが最後、終生その影響下から逃れられないもの――それこそ、ボクは怪物だと思うのだよ。

そういう意味で、ボクが出逢ったものは怪物と言えるだろう。

封印されていた夜石の記憶を取り戻した凪人は,「美鶴木夜石」が恐怖の感情を失った「首吊り館」と呼ばれる山中の廃墟にふたりで向かう.

「ようこそ,こちら側の世界へ」.最後の異界探索を描くシリーズ最終巻.冷たい恐怖と拭いきれない悲しみが静かな余韻を残す.あらすじ的には伝統的なホラーだけど,青春小説との融合によって緩急の利いた物語になっていたと思う.最後まで惹きつけられた.お疲れ様でした.