北元あきの 『魔術の流儀の血風録(ノワール・ルージュ)』 (講談社ラノベ文庫)

魔術の流儀の血風録 (講談社ラノベ文庫)

魔術の流儀の血風録 (講談社ラノベ文庫)

そこには理想家のような燦燦と燃える心も、テロリストのような暗い熱情も、なにもなかった。死人のような、顔だった。

「だが、お前もこの業界で長生きすれば、そのうちにわかるさ。いやになるよ、なにもかもがな」

太平洋戦争末期の混乱に乗じて,魔術師たちの楽園――マギウス・ヘイヴンと呼ばれるようになっていた東京.様々な人種,文化,言語,魔術,そして犯罪が跋扈する東京は,特高こと特別高等魔術警察によって治安が維持されていた.〈人斬り覚馬〉こと特高魔術師の綾瀬覚馬は,その力を使って魔術師たちの犯罪に日々立ち向かっていた.

魔法と血風が煙るノワール・アクション小説.混沌とした都市で起こる16人の連続魔術師殺しが,魔術師組織の抗争に火をつける.作者はあとがきで「警察モノ」と言っているけれど,ヤクザものとか香港ノワール,あるいは幕末ものの雰囲気もあると思う.まあ,共通するところは多いんだろうが.

デビュー当時から安定感とキレのあったアクション描写は分量少なめながらますます冴えを見せる.ある種の王道を行くストーリーに,大いに華を添えていた.続きが出るのかわからないけれど,今後もゆっくりでも小説を出してってほしいなと思った次第です.