斜線堂有紀 『私が大好きな小説家を殺すまで』 (メディアワークス文庫)

私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

人気小説家の遥川悠真が突如失踪した.遥川の部屋に残されていたのは,打ち壊された家具の数々と,少女が住んでいたような痕跡,そしてたったひとつのドキュメントのみが保存された一台のノートパソコンだった.

嫌な予感はしていた。この小説を読むことで、きっとこの失踪事件には余計な意味がついてしまう。それでも、読む以外に選択肢が無かった。

少女はなぜ愛する小説家を殺さなければならなかったのか.絶望の淵にいた少女と,才能を失った天才小説家の,奇妙な共生関係は,数年の時間を経て変化していく.小説を愛し,小説に救われ,小説を信じた結果,小説に狂わされ,小説に呪われ,小説に殺される.みたいな.やるせなく,とても怖い小説だと思う.どうすれば破滅が避けられたのかと考えるのもだるくなる,完結した世界があったと思う.良いものでした.

憧れの相手が見る影もなく落ちぶれてしまったのを見て、「頼むから死んでくれ」と思うのが敬愛で「それでも生きてくれ」と願うのが執着だと思っていた。だから私は、遥川悠真に死んで欲しかった。

私の神様は、ずっと死に損ね続けていたのだ。我ながら、酷いことを思うものだ。けれど、それが私の本当だった。それだけが私の本当だった。

私が犯した罪の話をする為には、やはり六年前から始めなくちゃいけないだろう。あの頃は私も単なる小学生だった。そして、先生は誰よりも美しい小説家だった。