鴨志田一 『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』 (電撃文庫)

青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない (電撃文庫)

青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない (電撃文庫)

よくやっていた。

それを疑いもしなかった。

けれど、そうした満足の裏側では、犠牲になっていたものがあったのだ。母親の存在を犠牲にして、成り立っていた合格点だった。

三月に入り,三学期も残り一ヶ月.麻衣先輩の卒業式当日に,七里ヶ浜の海岸で咲太は子役時代の麻衣先輩そっくりの小学生に会う.一方,離れて暮らしている父親から,長いこと入院していた母親が咲太と花楓に会いたがっているとの連絡が入る.

一年間の物語に大きな区切りをつける,シリーズ第九巻.うまくやっているつもりだった家族の中で,犠牲になっていたものがあった,ということに気付いたこと,和解しようとしたこと.主人公が少年のライトノベルで,母親との軋轢や和解を正面から描いたものは珍しい気がする.「最近のライトノベル」と言われるあれこれへの,ある種のカウンターみたいな意識もあるのかな.初期からは想像できない姿に成長した,というかすっかり涙もろくなった咲太を,「良かったね」みたいな目で見ることになるとは思わなかったよ.大学生編も楽しみにしてます.