竹宮ゆゆこ 『あなたはここで、息ができるの?』 (新潮社)

あなたはここで、息ができるの?

あなたはここで、息ができるの?

こうしている間にも脳みそは顔を伝って流れ落ちてしまうし、私自身が消えていく。

そうやって失われてしまうあれこれを、私の代わりに覚えていてなんて言わない。ただ、事態が変わるまでのほんの十数分でいいから、その目を向けていてほしいだけ。私が生きてきた時間を、みんなに感じてほしいのだ。

私にも、こういう時間があったんだってことを、知っていてほしい。

たった二十歳の,どこにでもいる女の子の私は,今まさに死の瀬戸際にいた.ひとりぼっちで脳をこぼしていた私の前に現れたのは,ビームに撃たれて蒸発したはずのひとりの宇宙人.宇宙人は私に「これとは違う現実を作れ」とわけのわからないことを言う.

死の運命を回避して,愛する宇宙人と生きるため,時間の塊の先へと.竹宮ゆゆこの描く「絶対、最強の恋愛小説」.ループものの一種でもある.「世界の終末」と「宇宙人」に込められた意味は,ベタだけどさすがうまい.ものすごく狭い時空間で閉じた物語になっていることが,恋愛小説としての純粋さを強固なものにしているのかな,と思ったのでした.