- 作者: 石川宗生
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2018/01/22
- メディア: 単行本
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でも、そのことに気づいたものは誰もいなかった。そのとき、誰もがそこにいて、いなかった。あったのは狂騒と静寂。ただ今、このバス停。
突如19,329人に増殖してしまった吉田大輔氏に関する報告を書いた第7回創元SF短編賞受賞作の「吉田同名」.一夜にして,ドールハウスのように半分になってしまった藤原家が町にもたらしたものを描く「半分世界」.ある町の,数百年にわたり続くダービーの歴史を語る「白黒ダービー小史」.そして,十字路にあるバス停に取り残された人々が作り出す文化「バス停夜想曲、あるいはロッタリー999」.
「日本発、世界文学」の帯に恥じぬ,思弁的でマジックリアリズム的な短編集になっている.日常のずれ,あるいは非日常のなかから,何らかの文化や風習が生まれる,というあたりが共通しているといえばしているのかな.淡々と飛躍するのがまさに魔術的というか,とても楽しい.とぼけたユーモアとロマンが効いた「白黒ダービー小史」が個人的にすごく好き.ほんとに良い短編集でした.
kanadai.hatenablog.jp