旭蓑雄 『レターズ/ヴァニシング2 精神侵食』 (電撃文庫)

レターズ/ヴァニシング2 精神侵食 (電撃文庫)

レターズ/ヴァニシング2 精神侵食 (電撃文庫)

「錬金術の理想とは、元素の結合や離反によってあらゆる現象が起こっているなら、その元素を掌握することで、すべてを意のままにできるというところにあります。ときには“創造主”にすらなれる、と」

「何だか、世界言語みたいだね」

神戸を中心に,世界言語を使用できる人間――オフスプリオリ――を狙う連続殺傷事件が発生した.特殊研究施設マルガレーテの能力者,千里は,警察の要請により捜査に協力することになる.あらゆる世界言語に干渉できる少女,語羅部鵬珠をパートナーに連れて明石特区を出た千里たちに,正体不明の能力者が襲いかかる.

世界を構成するという「世界言語」の存在を軸に,人工知能や言語や脳に関連した話が複雑に交差する.ハイブリッド臓器と人工臓器倫理委員会.最新のネットゲームであるレギオンエンジン.保存した“記憶”をコンパイルする“整列のプログラム”.人工臓器から生まれたために二つの時間軸を認識できるキメラ人間.世界言語を使って世界を“ウィジウィグする”.そして,これらを用いて現実のものになろうとしている不老不死.

情報量やキーワードは非常に多く,人間関係も狭い中で複雑に交錯するのでわちゃわちゃした印象があるものの,それぞれの概念はシンプルでわかりやすくまとめていると思う.何より,哲学用語やプログラミング用語を交えた語りがいちいち刺激的で,むちゃくちゃ面白い.同じテーマをもう少し絞ってわかりやすく書きくだすと『青春デバッガーと恋する妄想 #拡散中』になるのかな.いまいろいろとホットな百合SFでもあるので,一巻と合わせて皆も読むといい.間違いなく意欲作だし傑作ですよ.



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