深見真 『ヴァイス 麻布警察署刑事課潜入捜査』 (角川文庫)

ヴァイス 麻布警察署刑事課潜入捜査 (角川文庫)

ヴァイス 麻布警察署刑事課潜入捜査 (角川文庫)

「警察が……こんな、暴力……」

「許されるよ」と、武智は井上の髪の毛をつかんで引き寄せた。強く引っ張られて、井上は痛みにうめく。「警察は身内に甘いし、お前はくそったれの買春野郎だ。しかも未成年に暴力を振るった。ぶっ殺してもどうにかごまかせる」

港区中部を管轄する麻布警察署.刑事課二係のエース,仙石重一警部補は,六本木で起こる犯罪を揉み消すことでカネを稼いでいた.警視庁監察官室の細川巡査部長は,二係の汚職を暴くべく,仙石の部下として潜入捜査を行うことになる.

悪徳のカリスマに水面下で挑む潜入監察官は,やがて逃げられない深みへと沈んでいく.まさに「深淵をのぞく時,深淵もまたこちらをのぞいているのだ」を地で行くような展開の,汚職と暴力にまみれた警察小説.手癖で書いたような印象もあるけど,そのぶん安定してまとまっていると思う.