枯野瑛 『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? #07』 (スニーカー文庫)

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#07 (角川スニーカー文庫)

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#07 (角川スニーカー文庫)

ただの善人、ただ自分を犠牲にして世界を救おうとしている英雄であれば、まだましだった。それならば、善性を食い物にして戦っている護翼軍の悪辣さを責め立てる記事を書くことで、いくらでも上っ面の話題を狙えた。しかしあの少女は、そういうわかりやすい善性を見せてはくれなかった。

あれは、そう。

世界に対する、無関心だ。

堕鬼の少年は,ひとりの少女を英雄に仕立て上げ,世界から姿を消した.世界が英雄に守られていることを知った浮遊大陸群(レグル・エレ)はわずかな希望に湧く.パニバルとコロン,ふたりの黄金妖精(レプラカーン)は,〈十一番目の獣〉(クロワイヤンス)によって完全に侵食された39番浮遊島に立つ.

命の価値を理解しない存在は英雄たりうるのか.「心を繋いで束ねる」こと,信仰することの尊さと,その裏返しの危うさを描く,「終わったはずの物語の蛇足」.一冊の中でのテーマがはっきりしているせいか,心なしかロジカルにまとまっていたような気がする.死ぬことが当たり前だった重苦しい物語にも,ひょっとしたら何かしらの希望が芽生えつつある,のかもしれない.