冬月いろり 『鏡のむこうの最果て図書館 光の勇者と偽りの魔王』 (電撃文庫)

鏡のむこうの最果て図書館 光の勇者と偽りの魔王 (電撃文庫)

鏡のむこうの最果て図書館 光の勇者と偽りの魔王 (電撃文庫)

「つまり、悪を倒すために、関係ない奴らまで巻き込む勇者に、疑念を覚えたってことか」

ここはパライナの北端,世界の果てにある最果て図書館.訪れるひとはめったになく,魔物たちと記憶のない図書館長ウォレス,メイドのリィリが静かに暮らしていた.ウォレスはある日,倉庫にある鏡の向こう側に「はじまりの町」が映っていることに気づく.そこで鏡越しに出会った少女ルチアは,魔王を討伐に向かった勇者を助けたいのだと言う.

誰も知らない世界の果ての図書館から見守る,勇者と魔王の物語.第25回電撃小説大賞銀賞受賞作.RPGに影響を受けた部分が多いと思われるファンタジー.世界のあちこちにある《空間》という独自の存在が面白い.人間でも魔物でもないが,世界を維持しようとする意思を持ち,それが故に魔王や勇者を生んでしまう,という.なんとなく「Fate/hollow ataraxia」のことも思い出した.ただし,本格的なファンタジーとゲーム的なファンタジーのどちらに重点を置くのか,境目が曖昧なのはかなり気になった.