新八角 『ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?』 (電撃文庫)

ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか? (電撃文庫)

ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか? (電撃文庫)

「はい、ケシの種たっぷりの合法サンドイッチ二種です」

時は24世紀.荒廃した東京――第三実験都市スコピュルスの片隅に,その食堂《伽藍堂》はあった.厨房には天使のような少女,給仕は悪魔のような黒髪の仕事人.これは,闘争と狂乱の時代に花咲いた,奇蹟の食堂とうまい飯の物語である.

ポストアポカリプスなTOKYOの,荒川区あたりを舞台にしたSF的飯小説.多能性無核細胞(Pluripotent Anucleate Cells,通称PAC)によって引き起こされたパンデミックと世界大戦,そしてPACを取り込んだ生物進化に伴い世界は大きく変貌した.デビュー作から書き続けてきた独特のファンタジー世界もとても良かったけど,SFを描いてもうまいんだなあ.じわじわと明らかにされる世界の作り込みや,その見せ方も肩が凝らず面白い.

完全栄養食オイル・バー素揚げの蜜掛け(「二つで十分ですよ!」らしい)に,クモ型自律戦車の人工筋肉の刺身(装甲で守られているから寄生虫や雑菌も入り込まなくて安全,ただし加熱する場合は悪臭のもとになる樹脂製の関節は外す)! と,テーマである「飯」も洒落とくすぐりにあふれている.続刊も楽しみにしております.



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