高橋祐一 『復讐の聖女』 (スニーカー文庫)

復讐の聖女 (角川スニーカー文庫)

復讐の聖女 (角川スニーカー文庫)

「お前がわたしの裁判の一部始終を見届けたように、今度はお前にはわたしの復讐(ヴィンディクタ)と、『裏切り者』を探す旅のすべてを見届けてもらおう。それがお前の贖罪だ。すべてが終わったとき、わたしはお前を赦すだろう」

1434年.ギョーム・マンションは,3年前に死んだはずのジャンヌ・ダルクに首をはねられた.ルーアン異端裁判所筆頭書記官として,乙女ジャンヌ(ジャンヌ・ラ・ピュセル)裁判の一部始終を記録していたギョームは,ジャンヌの復讐(ヴィンディクタ)と,裏切り者探しの旅に付き合わされることになる.

ルーアン,シノン,ポワティエ,オルレアン.蘇った聖女の復讐の旅,というには,不死身の聖女ジャンヌがポンコツすぎる.復讐相手を見つけると制止も聞かず「殺す今すぐ殺す」と突っ込んでいくわ,けっこうな食いしん坊だわ,祭の演劇で本人役を演じることになるわという.書記官とポンコツ聖女の復讐道中という方がより近い.シリアスな場面ももちろん多いとはいえ,印象としては語られるテーマと実際にやっていることの間のズレがかなり大きい.意図的なものかよくわからないのだけど不思議な読み心地になる.