酒井田寛太郎 『ジャナ研の憂鬱な事件簿5』 (ガガガ文庫)

ジャナ研の憂鬱な事件簿 (5) (ガガガ文庫)

ジャナ研の憂鬱な事件簿 (5) (ガガガ文庫)

人間の心は、キマイラだ。矛盾する二つの感情が、背中合わせで同居している。

海新高校ジャーナリズム研究会,略してジャナ研の,冬から卒業までの事件を描いた学園ミステリ完結巻.1952年のソヴィエト,北部第二強制収容所で起きた聖夜の出来事を,クライマックスの書かれなかった小説から読み解いていく「ロシアン・ウイスキー・ホーリーナイト」.結婚を決めた若いふたり,しかし女性が予兆もなく失踪した,その原因を探る「消えた恋人」.追い出し祭の事件と,卒業しても続く縁を匂わせる「ジャナ研の憂鬱な事件簿」.最終巻だからといって変わったことをせず,当たり前のように卒業が訪れ,余韻を残しつつ閉じていく.静かで落ち着いた,とても「らしい」ラストだったと思います.