さがら総 『教え子に脅迫されるのは犯罪ですか? 4時間目』 (MF文庫J)

教え子に脅迫されるのは犯罪ですか? 4時間目 (MF文庫J)

教え子に脅迫されるのは犯罪ですか? 4時間目 (MF文庫J)

この世界は、悔しいことばかりだ。

デビュー作を打ち切られるのは悔しい。三シリーズ目でも同じぐらい悔しい。同期と比べられるのは悔しい。編集長に宥められるのはなおさら悔しい。担当に負けを認めるのはもっと悔しい。

読者に、自分の書いた本が届かないことは、なにより悔しい。

「わたし、作家デビューが決まりました」.星花がWeb小説の賞を受賞して,MF文庫Jからデビューすることになった.天神は自分が同業者であることを隠したまま,星花の受賞パーティに赴く.大賞を取ったのは,これまた女子中学生作家の八谷屋夜弥.夜弥は受賞の挨拶で「自分は神である」とのたまい舞台上で脱ぎはじめる.

天才と凡人,ふたりのJC作家の間に挟まれた塾講師兼業作家の天神は,作家としてひとつの転機を迎える.才能と引き換えに大人としての態度を手に入れた作家が,同じ凡人の仲間を手に入れてもう一度立ち上がろうとする.なけなしの才能が尽きかけた大人と,すべてが最高だと無邪気に言い切る中学生の対比が切なく,才能あふれる者と凡庸な者の対比がまた切ない.

「才能」というテーマがテーマだけに,これまでの作品に比べると考えられないくらいストレートに言葉が出ているように感じる.ここまでのシリーズの流れから見るとかなり唐突な展開,というか語りに余裕がないように見えるのだけど,これは意図してやっていることなのかな.