- 作者: ますもとたくや
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2019/03/19
- メディア: Kindle版
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「……私、今まで、思いもしなかった。普通にテレビでアニメ見ててさ、作ってる人達が、こんなに大変だったなんて」
俺はあわててスプーンを置いて佐江に言う。
「そんなん、思う必要ないよ」
「え?」
「俺も含めてアニメ作ってる人間が、見た人に思ってほしいことはただ一つ。『面白かった』。そんだけ。どんなに苦労しても、たったその一言で、本当に報われる」
デビュー以来鳴かず飛ばずの脚本家,竹田雲太にある日持ち込まれたワケありの仕事.それは,ある事情からTVシリーズが炎上したアニメの劇場版の脚本だった.
竹田を嫌うプロデューサー,職人気質の監督,原作原理主義の編集者から次々と繰り出される無茶振りで,炎上中のプロジェクトはますます燃え上がる.『けものフレンズ2』のシリーズ構成・脚本家の手で書かれる,アニメ脚本家の苦悩の物語.
無茶振りという名のルールに,いかに抵触せず脚本を成立させるか.ミステリアニメの脚本を作る小説ではあるのだけど,自動的にメタミステリ的な構造を持つようになるのね.自明なのかもしれないけど,不思議で新鮮だった.現実の炎上と比較すると「ファン」の存在がかなり弱く,逆に「デウス・エクス・マキナ」がかなり強く見えるのは,いろいろ考えてしまうね.事実は小説よりよく燃える.よい小説だと思います.