草野原々 『これは学園ラブコメです。』 (ガガガ文庫)

これは学園ラブコメです。 (ガガガ文庫)

これは学園ラブコメです。 (ガガガ文庫)

理解してはいけなかった。キャラクターがストーリーの構造を理解してはいけないのだ。だが、メタフィクション的存在であるまどかと長く接してきたこと、そして無数の競合するストーリー展開に流されてきたことが、圭にそのことを理解させてしまった。

その理解の副作用は大きかった。自身の虚構性があらわになってしまったのだ。自分がストーリー構造の奴隷であることをはっきりと理解してしまったのだ。

どこにでもいる高校生の高城圭は,ピンク髪の幼なじみとともに学園ラブコメのような学校生活を送っていた.そう,圭は正真正銘,ラブコメの主人公だったのだ.「虚構を作る力の擬人化」であるまどかと力を合わせ,SFやミステリやファンタジーの侵略から,学園ラブコメであるこの物語を守るのだ.

『構造素子』に触発されて書き始めたという「ハイテンション×メタフィクション学園ラブコメ」.虚構(フィクション)の存在を,メタフィクションにメタフィクションを重ねて語ってゆく.フィクションと現実の関係だったり,フィクションの構造だったり,フィクションにとっての毒である「なんでもあり」だったり.

『構造素子』が基礎編だとしたらこっちは応用編というか,『構造素子』に学園ラブコメのスキンをかぶせてわかりやすくしたものというか.スラップスティックでバカなメタSFとして単品でも楽しいのだけど,『構造素子』とセットで読んでみるとより良いかもしれない.なにせヒロインが河沢(こうぞう)素子だし,どのくらいインスパイアしているのかわかるとより楽しい,と思うので.



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