- 作者: 野宮有,マシマサキ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2019/04/10
- メディア: 文庫
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心臓に棲む怪物に精神を侵食された銀使いには罪悪感を感じる機能はなく、殺人という禁忌を破ることに対する躊躇いも存在しないとされる。だとすれば、この胃の底に溜まる泥のような感情は俺の錯覚だ。心臓を締め付ける棘のような疑問は、タチの悪い幻影だ。
バレシア皇国エルレフ市イレッダ特別自治区――打ち捨てられた人工島,通称「成れの果ての街」.金次第で動く何でも屋の《銀使い》ラルフと相棒のリザは,組織から逃亡した少女娼婦を連れ戻すという依頼を受ける.
ひとりの少女をめぐる,銃と異能のハードボイルド・クライムアクション.第25回電撃小説大賞選考委員奨励賞受賞作.いろいろな設定を詰め込んでいるのは意欲的,ではあるのだけれど,その見せ方が最悪に近い.地の文とセリフの両方を使った説明調の文章を導入部に詰め込んでおり,更にハードボイルドを意識した文体との相性もかなり悪い.目が滑りまくる.
「買った」ものにしか働かない異能力を活かしたアイデアに,ゾンビを次々と砲弾のように飛ばすシーンのインパクト.見るべきところはちゃんとあるのだけど,導入が悪いおかげで話の核心に近づくまで悪い印象をずっと引きずってしまう(実際極端なのは最初の方だけ,だと思う).最終的にその印象をひっくり返す力があるかというと,うーんという.