屋久ユウキ 『弱キャラ友崎くん Lv.7』 (ガガガ文庫)

弱キャラ友崎くん Lv.7 (ガガガ文庫)

弱キャラ友崎くん Lv.7 (ガガガ文庫)

もし、この直感が正しいのなら。

この脚本はきっと、空想を展開させて描き出した、ただのフィクションではない。

きっと、自分の身を削るようにしてキャラクターを生み出して、過去の経験の一つ一つを濾過して、結晶化したような、大切な物語。

みみみからの突然の告白に混乱する友崎に新しく与えられた課題.それは,「攻略対象」を二人以上選ぶということ.日南に二人の「攻略対象」を伝えた友崎は,新たなイベントを与えられる.慌ただしい日々が過ぎ,一度きりの文化祭が始まろうとしていた.

生まれてからずっと染み付いていた「俺なんか」という弱キャラ根性.それを捨てて,自分の意志で誰かを「選ぶ」こと.そこに特別な理由が必要なのか? 菊池さんとの演劇脚本作り,みみみとの漫才練習を通じて,葛藤を一歩乗り越える第七巻.いやー,集大成.これぞ青春の悩み.「世界という物語に誠実でいたい」という作中の言葉を,そのもので体現した作品になっていると思う.

理想と感情,両方を手に入れるためのたったひとつの方法がある,この言葉に説得力があった.そして演劇の描写とセリフに乗せて心情を描いていく場面の迫力.演劇か舞踏会の場面があるライトノベルはだいたい傑作,という自分が提唱している法則が今回も守られた.ゲームのプレイヤー目線で「人生」を見ることの意味が改めて掘り下げられる.今までも良かったのだけど,さらに一皮むけた感がある.改めて良い青春小説だし,続きがさらに楽しみになりました.