手代木正太郎 『不死人の検屍人 ロザリア・バーネットの検屍録 骸骨城連続殺人事件』 (星海社FICTIONS)

不死人(アンデッド)の検屍人 ロザリア・バーネットの検屍録 骸骨城連続殺人事件 (星海社FICTIONS)

不死人(アンデッド)の検屍人 ロザリア・バーネットの検屍録 骸骨城連続殺人事件 (星海社FICTIONS)

「教えてくれ」ロザリアがコープスに語りかける。コープスの腹の内から、腐汁に塗れた臓器の一つを取り出した。赤子でもとり上げるような愛情のこもった手つきで、それを仔細に観察する。「おまえがどう生きてきて、どう死んだのか……。ああ。泣くな、泣くな。大丈夫だ。すぐに終わるんだから。そうしたら、ゆっくり休んでいいんだから」

普通なら、怖気を感じるような光景かもしれねえ。だが、俺はなぜか死者に語りかけ、腐肉を調べる少女の姿に、ある種の美しさみてえなもんを感じ、魅入ってしまっていた。

ヴァンパイアの血を引くと伝えられるエインズワース一族.その居城である〈骸骨城〉ことエインズワース城で,当主の花嫁候補が次々と怪死し,屍人(コープス)として復活する事件が発生する.城に招かれていたアンデッドハンターのクライヴは,アンデッド検屍人のロザリアと協力して事件の真相を探る.

通常の死者であれば当然受けられる死因の究明.アンデッドはそれを受けられずに焼却される.ファンタジー風の世界を舞台に,「アンデッドの尊厳」という概念と,医療の知識を導入した「暗黒怪奇ファンタジー」.ざっくり言うと「魔法医師の診療記録」をよりダークに,かつ新本格ミステリにした印象と言うかな.呪われた骸骨城,ヴァンパイアの血を引く一族,地下室に200年閉じ込められ続ける吸血鬼,オランジェリーに出現する幽霊と,ダークファンタジーの雰囲気と舞台づくりは十二分.横溝正史っぽさがある(山田風太郎風の語りもやっぱりある).

伝奇,ミステリ,ファンタジー,スプラッタがぎっしり詰まっている.これぞエンターテイメント小説.良いものでした.