岡本タクヤ 『学園者! ~風紀委員と青春泥棒~』 (ガガガ文庫)

学園者! ?風紀委員と青春泥棒? (ガガガ文庫)

学園者! ?風紀委員と青春泥棒? (ガガガ文庫)

たとえば、優しい正論を言うことはできる。励ますことはできる。

この小さな世界の外側には、俺たちがまだ知らない広い世界がある。

高校生活なんて、人生でたった三年間のこと。

人生はまだ続く。その先で、もっと楽しいことがいくらでも待っているはずだ。

――それは、その通りなのだろう。

けれど、彼女は、一度しかないこの季節に何かを手に入れたかったのだ。

そして、それは叶わなかった。

総生徒数三千人を数えるマンモス高校,東天学園.トラブルシューター兼トラブルメーカーと呼ばれる風紀委員に所属する二年生の椎名良士は,帰国子女の新入生,天野美咲に出会う.天野は「最高の青春を過ごすには、どうすればいいですか?」と衒いなくまっすぐに問いかける.

皆の青春を守るため,そして「最高の青春」を見つけるために,風紀委員のコンビは学園を駆け回る.「学園」という舞台の特殊性を掘り下げて,そこで起こることを考えた青春小説になっていると思う.ここには三千人が詰め込まれていて,見える景色は皆違う.三年間しか通えない場所であり,卒業した先輩たちが残していったもの,これから自分が残すものがある.戦場であり楽園でもある.そして誰もが「最高の青春」を見つけられるとは限らない,という残酷さを描く.

刑事小説や探偵小説のフォーマットを使ったと言うだけあって,軽快かつスマートで読みやすいし,椎名と天野の凸凹コンビのやり取りがバディもののようで楽しい.何よりも,空気を読まない,どこまでもまっすぐな天野がかわいい.楽しくて,少ししんみりしてしまう.これぞ「学園モノ全部入りの青春学園物語」,でした.