柴田勝家 『ワールド・インシュランス 01』 (星海社FICTIONS)

ワールド・インシュランス 01 (星海社FICTIONS)

ワールド・インシュランス 01 (星海社FICTIONS)

今となっては、保険業が担うものはありとあらゆる人間の営為だ。人が生きていく中で、あらゆる不慮の事態が起こりうる。それら全てに保険があり、顔も知らない無数の他者が少しずつ補償を行い、誰かの不運を帳消しにしてくれる。

それこそ保険のシステム。

カイン・ヴァレンタインはイギリス最大の保険市場,ロイズで保険引受人(アンダーライター)を勤める日本人.彼は行きがかりで出会った少女,ベティから,自らの瞳に掛けられた一億ドルの保険の再保険を請け負うことになる.

一億ドルの「サリエルの瞳」に隠された秘密とは.イギリスを中心に描かれる,日本人の保険調査員とお嬢様のアクション小説.テーマ的に「MASTERキートン」と「カリオストロの城」を足したような雰囲気がある.明快で痛快なアクションと,いくらかホラとトンデモが入ったSFガジェットは抜群に相性がいいなあ.良質な二時間ドラマみたいな,テーマと内容がきれいに噛み合ったエンターテイメント小説でした.