六塚光 『ブラッド・スパート 3 ―殉難者たちへの鎮魂歌―』 (幻狼ファンタジアノベルス)

ブラッド・スパート 3 ――殉難者たちへの鎮魂歌 (幻狼ファンタジアノベルス)

ブラッド・スパート 3 ――殉難者たちへの鎮魂歌 (幻狼ファンタジアノベルス)

「ここで、あんたが、『十二年前のことは後悔している。すまなかった』などと言い出したら、心が揺らいでしまうかもしれなかった――」

くわ、とダンテは目を剥いた。

その顔に浮かぶのは、十二年来の復讐を果たす機会がついに来た、という喜び。

「――だが、今の話を聞いて、安心した。あんたを八つ裂きにするのに、良心の痛みを一片たりと感じずに済みそうだ――」

前の戦争で暗躍したイステリア王国特殊部隊ブラッド・スパート.元隊員にして戦争の英雄だったトロイ・エヴァレットと,反乱軍の生き残りダンテ・ピンパーネルの前に最後の敵が現れる.

12年前の戦争で起こった真実と,復讐劇の終わり.戦争の影が漂う,ヴィクトリア朝ロンドンをベースにした世界での物語,完結編.あとがきで語られるこだわりの通り,雰囲気は十分.時折挟まれるとぼけたやりとりも洒落ている.バディものアクション小説として,そして復讐の物語として骨太だし,描くべきものを描ききったとの印象を受け取った.