- 作者: 野崎まど
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2019/06/21
- メディア: 文庫
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「あ」と思った時には、もう遅かった。身体が先に理解して、頭が後から追いついた。
彼女の笑った顔が、胸に焼き付く。そのまま消えずに、胸の奥を暖め続ける。
こんなに素敵なものが、この世界にあるんだと思った。
こんなこと、軽々しくは言いたくないけれど、多分僕はこの光景を、一生忘れないんじゃないかと思う。
彼女の笑顔は、本当にそれくらい大切な。
僕の宝物になった。
堅書直実は京都に住む,読書が好きで内気な高校生.ある日,直実の前に三本脚のカラスと,フードをかぶった謎の男が現れる.この世界は記録された情報のなかに存在する「過去の京都」であり,男は10年後の現実から干渉している未来の直実だという.
9月に公開されるアニメ映画の原作小説.豊かなビジュアルを前面に押し出した夏の描写と,キラキラした初々しい初恋が描かれる,一見していかにも夏(公開は9月だが)の劇場アニメ原作らしい小説.それでいて,裏でやっているのは『順列都市』や『白熱光』を引き合いに出すゴリゴリのハードSF.この世界はただの現実のコピーである,とこれでもかと見せつけながら,でもそんな世界もかけがえのないものであって,真実の世界なのだ,という.なんというか,野崎まどの底意地の悪さとエモーショナルさの両方がめっちゃ効いている.良いSFであり良い青春小説だったと思います.これがどういう風に映画化されるのか.劇場公開を楽しみにしてます.
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