折輝真透 『マーチング・ウィズ・ゾンビーズ ぼくたちの腐りきった青春に』 (集英社)

マーチング・ウィズ・ゾンビーズ ぼくたちの腐りきった青春に (JUMP j BOOKS)

マーチング・ウィズ・ゾンビーズ ぼくたちの腐りきった青春に (JUMP j BOOKS)

先輩がこれを読んでいる時、僕はもう死んでいる。もし生きていたら、恥ずかしいから殺してほしい。

アメリカで開発され,漏洩したゾンビウイルスが全世界に蔓延してから5年.フィッツジェラルドに憧れる大学生の藤堂に感染したゾンビウイルスは,体内で変異型白血球を作りながら,内臓を腐らせ始めていた.「ゾンビの会」という自助グループに入った藤堂は,なんとなくつるんでいた仲間たちとの関係を変えながら,安楽死の日を待つことになる.

第4回ジャンプホラー小説大賞金賞受賞作.どこか翻訳ジュヴナイルを思わせる,ポップな語り口が特徴的な青春ゾンビ小説.「身も心も」腐り果てた大学生が,最期の日を迎えるにあたって考えたこと,感じたことを語りかけるようにただ綴った遺書でもある.内臓の腐敗が進行し,せん妄が長くなるなかでの自分語り.普通に生きてきて居場所のなかった自分,ゾンビになってただ彷徨っている自分.そして周りにいたひとたちについて.気取ってかっこつけた語りに,屍臭をごまかすためにつけるという香水の強烈なミント臭が強く印象に残る.ホラーの持つ懐の深さを感じる,よい青春小説でした.