伊西殻 『じんるいのみなさまへ ―わたしたちの場所―』 (エンターブレイン)

じんるいのみなさまへ ―わたしたちの場所―

じんるいのみなさまへ ―わたしたちの場所―

――貴方が人類以外の存在でない事を示す為に、以下の画像を文字に合わせて選んで下さい。

邑楽幽々子が長い夢から目を覚ますと,そこは無人の秋葉原だった.連れ立って旅行に来たはずの6人は,誰もいない廃墟の街で,自給自足のサバイバル生活を送ることになる.街を探索をしたり狩りをしたり,力を合わせて少しずつ快適な生活を作り上げていく6人.大切な記憶に蓋をされたまま…….

無人の街で目覚めた6人.蓋をされた記憶.わたしたちのこの友情は本物なのか.原作のメインライターによる,同名ゲームのノベライズ.少しネタバレになるけど,「天冥の標」の一エピソードのような雰囲気を感じた.ゲームプレイをそのままなぞるような,ノベライズにつきもののかったるいシーンは前半それなりに長い.ただ,違和感と謎が形を持ち始める中盤から後半に入ってからはあっという間.もっと言葉を尽くしてほしいと思うところは多いものの,悲壮と希望のバランスの取れた,優しい物語だったと思う.

……しかし,中盤で明らかになる,あるSF考証が気になって気になって仕方なかった.「天冥の標」との比較でそう感じるのかなあと思うが,物語の大前提となるところが,そんなんでいいのかな,と.ちょっと識者の話を聞いてみたいな.



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