- 作者: 牧野圭祐
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2019/08/21
- メディア: 文庫
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【ツィルニトラ共和国連邦の宇宙開発は重病に冒されている。抜本的な治療をしなければ、いずれ死に至るだろう】
1965年.ツィルニトラ共和国連邦とアーナック連合王国の宇宙開発競争が熾烈を極めてゆくなか,資金的に行き詰まる共和国では,上層部の人命軽視と隠蔽体質がますます強くなっていた.そんな折,「人類史上初の宇宙飛行士夫婦」の構想によって,ミハイルとローザは強制結婚を命じられる.
いくつかの「人類史上初」を経て,転機を迎えようとしていた東西大国の宇宙開発競争.そこに待っていたのは,人類史上初の悲劇だった.人類と吸血鬼のオルタナティヴ宇宙開発史,第五巻.今回は共和国連邦側の視点から,宇宙開発の裏を描いてゆく.あとがきで明確にネタバレを禁止している(珍しい)ので,話の流れにはあまり触れないほうがいいのかな.
ここまでの巻に比べると,マクロ(≒現実の宇宙開発史)とミクロ(登場人物の視点)がより有機的に絡み合っていたように思う.物語のタイトルをそこに持ってくるのか,とか,ソ連の宇宙開発にビートルズがそういう精神的影響を与えたのか,とか,大小いろんな部分で感心させられた.今回は文句なしによかったと思います.