谷春慶 『筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。』 (宝島社文庫)

筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 (宝島社文庫)

筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 (宝島社文庫)

その書を見た瞬間、胸の奥をギュッとなにかでつかまれたような気がした。

儚い、と思った。ところどころ文字を崩して書いているため、文章自体はなにが書かれているのか明確にはわからない。だが、この文字は確かに泣いていて、今にも消え入りそうなのだ。

書道家にして鎌倉学院大学一の変人,東雲清一郎.祖父の遺した手紙の筆跡鑑定を依頼するために声をかけた近藤美咲だったが,すげなく断られてしまう.

「気持ちに嘘はつけても文字は偽れない」.文字に込められたひとの想いが事件を起こす.4つの連作短編ミステリ.いわゆるお仕事小説と言っていいのかな.よく言えば堅実,悪く言えば地味.登場人物にいまひとつ魅力がなかった(総じて性格が悪い)のもあって,全体的な印象もそれなり止まりでした.