奥村惇一朗 『イー・ヘブン』 (講談社ラノベ文庫)

イー・ヘブン (講談社ラノベ文庫)

イー・ヘブン (講談社ラノベ文庫)

俺には肺がない。心臓もない、脳もない。そのうえ生前の記憶すらない。あるのはこの1年分の記憶と、この心だけだ。その1年間の人生と、努力と、シオと過ごした時間、全てを否定された気分だ。

そんなの、あんまりじゃないか……。

目が覚めると,レイジは知らない部屋にいた.そこは,電子的に造られた人工の死後の世界,「イー・ヘブン」.それから一年.失われた記憶とこの世界の謎を求めて,レイジは冒険を続けていた.

RPG風に構築された,魂を持たないアップロード生命たちの世界.そこに隠された謎と記憶.第4回講談社ラノベチャレンジカップ佳作受賞作.手堅くまとまった冒険ものといった風情.ネットゲーム風だけど,ゲーム的なところがあまりない(そもそもゲームではない)のは印象が良い.ただし,SFとしてはオーソドックスすぎてそれほど乗れなかった.肉体を失ったアップロード生命を,人工的な肉体にダウンロードする,みたいな話も少し触れるけど,一巻では触れる程度.よく言えばまとまった,意地悪な言い方するとおとなしいSFファンタジーでした.