深見真 『バイオハザード ヴェンデッタ』 (角川ホラー文庫)

バイオハザード ヴェンデッタ (角川ホラー文庫)

バイオハザード ヴェンデッタ (角川ホラー文庫)

人間の三大欲求のうち、ゾンビには食欲だけが残る。

ゾンビは眠らない。

性欲が残らないのはなぜだ?

実験のためにね、性欲を残したゾンビを作ろうとして……上手くいかなかった。

リビングデッドとはなんだ?

死者がよみがえるとはどういうことなんだ?

レベッカ・チェンバースが国際指名手配犯グレン・アリアスに拘束された.アリアスの目的は,ウイルスによるバイオテロを起こすこと.Bioterrorism Security Assesment Alliance(BSAA)のクリス・レッドフィールドとDivision of Security Operations(DSO)のレオン・S・ケネディはテロの阻止とレベッカの救出のためニューヨークへと向かう.

脚本家自らによる,同名映画の小説化.起承転結のくっきりした,アクション小説のお手本のような小説だと思う.導入はジャレド・ダイアモンドとサルトルのエピグラフから始まり,レヴィ=ストロースやJ・G・バラードを例に引きながら,人類社会に潜む邪悪や構造的な欠陥について,そして人類の存在について詳らかにしてゆく.アクションシーンももちろんお手のもの.小道具から思想まで,描かれるひとつひとつがピシッと決まっており,スタイリッシュでかっこいい.「男の子ってこういうのが好きなんでしょ?」と全編通して問われているかのような.バイオハザードに触れるのは初代ディレクターズ・カット以来でしたが,ちょう楽しかったです.