周藤蓮 『吸血鬼に天国はない②』 (電撃文庫)

吸血鬼に天国はない(2) (電撃文庫)

吸血鬼に天国はない(2) (電撃文庫)

  • 作者:周藤 蓮
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/12/10
  • メディア: 文庫

「しかし――――」

言葉が、苦い。

「――――まるで不幸になるために一緒にいるみたいだね、君たちは」

運び屋のシーモア・ロードと吸血鬼のルーミー・スパイクがいっしょに暮らし始めてから最初の年明け.シーモアは異形の双子,ニコルベルとリンのトラベルに巻き込まれる.一方で,シーモアとの約束を守り続けていたルーミーは少しずつ衰弱していた.

吸血鬼の少女と運び屋の青年の,純粋すぎる感情と価値観のすれ違い.個人的大傑作だった一巻をさらに粗くし,さらに尖らせたような印象を受けた.ロジックではなく,場面の描写力と,それに感情を乗せることで物語の形を作っている,ように感じた.

小柄な姉と,大柄で言葉の話せない異形の妹の双子.どこにもいない吸血鬼を望み続けた吸血鬼狩り一族の末裔.刑務所の地下に幽閉された殺人鬼.様々な人間や怪物に出会うことで,人間に惹かれ,人間の純粋さを知りたいと思っていた世界最初で唯一の吸血鬼が,人間を知る巻,ということになるのかな.実際は人間なんて純粋じゃないし.なんなら生きているものはみな平等に間違っている.すべての人間を知る必要も受け入れる必要もない.だから僕が君を受け止める.異論もあるかもしれないけど,ポストセカイ系の物語なのかもしれない.正直すべてを消化できた気はしないのだけど,やっぱりすごく好きな作品だなと思いました.



kanadai.hatenablog.jp