- 作者:松山 剛
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2019/12/25
- メディア: 文庫
「誰かの
人生 を乗っ取る――」最後にこう言った。
それがスペースライトの本質ですよ、と。
謎めいた後輩,犂紫苑は,自分が大流星群テロの黒幕「ガニメデ」であると言う.「人類には夢が足りない」と語るガニメデ.一度手放した「夢」について,改めて思いを馳せる大地のもとに,「一周目」の自分が現れる.
タイムトラベルとは,世界をまるごと上書きすること.タイムリープを行ったツケと代償を,あらゆる形で見せつけてきたシリーズではあるけれど,今回は極めつけではなかろうか.タイムトラベラーたちに何度も書き換えられ,変貌していた世界.時間を0.3秒だけ巻き戻すことができる地球外由来の細胞.「一周目」が現れる恐怖.タキオン通信の有効的な(そしてかなり都合のいい)使い方はとても良いと思う.
終盤はあっさりしていた印象を受けたけど,「夢という名の怪物」とそれを縛る「才能」の関係,そして宇宙開発やタイムリープといったややこしいことを,手を抜かず並行して描く熱量は本当に素晴らしい.ぐいぐい惹きつけられた.宇宙の謎と時間の謎をひとまとめにしたラストの引きも極めつけ.続きを首を長くしてお待ちしております.