ひなちほこ 『特殊能力統轄学院 叛逆の優等生と悪魔を冠する少女の共犯契約』 (MF文庫J)

妄想を具現する《観測者》は、世界に対して意図的な誤認を繰り返す。

故に、エスカレートし過ぎると彼女たちは『還るべき現実』を見失ってしまう。

現実と観測の区別が付かなくなり、どこまでが観測による現象なのか、世界が本当はどんな法則で成り立っていたのか――解らなくなってしまうのだ。

特殊能力統轄学院.妄想を具現化する力を身につけた少女たちである《観測者》(アルテフェクス)を保護し,養成する名目で人工島に設立された,強制収容施設.日常を奪われた学院に,ある目的で潜入した仮採用監理官の紫門は,「アスモデウス」の名を持つ少女と《仮契約》をすることになる.

第15回MF文庫Jライトノベル新人賞佳作.叛逆の優等生と悪魔の名を冠した少女.再会と復讐のため,ふたりは共犯関係を結ぶ.やけに古めかしい印象を受けたのは,言葉使いと固有名詞のせいかなあ.「まぢ」をはじめとした話し言葉とかPDA(他に適当な言葉がないのもわかるが)とかルビの使い方とか,テキストの温度がいきなり変わるところとか.そこまでの前提をすべてひっくり返すような,終盤の種明かしは評価できるし好きなのだけど,そこまでにたどり着くまでがひたすら長く感じた.