- 作者:芹沢 政信
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2020/01/22
- メディア: 文庫
では幸福を得るために、君は何をするべきだろう?
読むのではなく、書きなさい。
現世から受けた折檻によって醜く腫れあがった己が心を癒やすために、ただひたすらに物語を紡ぎ、目に見える世界を虚構の色に染めあげるのだ。
文字の羅列に魂を売り渡し、佇立する肉体を記述せよ。
それこそが真なる幸福にいたる唯一の道。
百年前の文豪,欧山概念の未完の遺作〈絶対小説〉.それを手にした者は,欧山の文才が与えられるという.ライトノベル作家の兎谷三為にそんな話をした先輩は,原稿とともに失踪してしまう.
プロ作家の再デビューを支援するために創設された,第1回講談社NOVEL DAYSリデビュー小説賞受賞作.伝説の文豪の遺作と,「創作という永遠の呪い」をめぐる,あるライトノベル作家の冒険.失踪した先輩の妹をパートナーに,河童の集落に流れ着き,闇の出版業界人の巣窟である講談社に囚われ,欧山と神と崇めるカルト集団の島に拉致される.読みながら『二流小説家』と『Xと云う患者 龍之介幻想』を連想した.
幻想,奇想と言っていい類のアイデアだと思うんだけど,奇想小説らしからぬ朴訥とした文章や,淡々とした展開が妙におかしい.最初はミスマッチな印象が強いけど,だんだんと癖になってくる.再デビューという経緯があればこそ生まれた,不思議な巡り合わせの物語だと思う.読み終わる頃にはとても好きになっていました.
ちなみに一度目のデビュー作の感想はこちらから.
kanadai.hatenablog.jp