鴨志田一 『青春ブタ野郎は迷えるシンガーの夢を見ない』 (電撃文庫)

青春ブタ野郎は迷えるシンガーの夢を見ない (電撃文庫)

青春ブタ野郎は迷えるシンガーの夢を見ない (電撃文庫)

  • 作者:鴨志田 一
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/02/07
  • メディア: 文庫

今のご時世に至っては、他人の気持ちや気分がスマホひとつで無差別に飛んでくる。見ようとしなくても情報は世の中に溢れているし、無意識に何かに影響されていく。

知りたくなかったことでも、見たくなかったことでも、知ってしまって、見てしまったあとでは手遅れだ。

もう知らなかった自分に戻ることはできない。

知ってしまった自分が今の自分だから。

その自分と付き合っていくしかないのだ。

梓川咲太たちが大学生になって半年.同じ大学に通うアイドルグループ「スイートバレット」のリーダー,広川卯月の様子がおかしい.いつもド天然で,空気を読めない卯月が周りの空気を読んでいる.それは,久しぶりに聞く思春期症候群だった.

大学生になっても思春期は終わらない.前の巻から約一年半.受験生編や卒業編をあっさりとスルーして始まった大学生編(あとで回収する可能性は高いけど).空気を読めなかった少女が,空気を読めるようになって,強さと弱さを手に入れる話,みたいな.実に青臭く,それでいて現代的な,よい青春ものだと思う.今回は環境の変化や一年半の新たな出会いを描いたプロローグという趣が強かったかな.引き続き楽しみにしてます.