宮澤伊織 『裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル』 (ハヤカワ文庫JA)

やばい、追いつかれる。追いつかれたら……。

……追いつかれたら、どうなるんだ?

何をされるんだ、こいつらに?

それすらわからないことに慄然とする。これが野犬なら、噛まれる痛みや、喰い殺される恐怖を想像すればいい。だけど、こいつらは何なのかすらわからない。

〈裏側〉で“あれ”を目にした紙越空魚は死にかけていた.そこにたまたま通りかかった仁科鳥子に助けられたことで,くたびれ気味の大学生だった空魚の人生は一変する.

都市伝説や実話怪談,ネットロアが形を持って存在する謎の空間〈裏世界〉.お金のため,いなくなったひとのため,相方のため,ふたりの女子は探検する.ストルガツキー兄弟の『ストーカー』みたいな設定だと思ったら,そもそも原題がそのまま(『路傍のピクニック』)だったのね.

ポップで読みやすい語り口で,〈裏世界〉という現象への認識から生じる恐怖と狂気をすらすら読ませる.腹の底からじわじわと気持ち悪さが浮かんでくるのだけど,読むのを止められない,みたいな.薄皮一枚の裏表にある現実と裏世界,その密接な位置を自然に飲み込ませてしまう,みたいな.アニメ化発表を機に積ん読から取り出したのですがとても良いものでした.



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