本田壱成 『シンドローム×エモーション』 (電撃文庫)

シンドローム×エモーション (電撃文庫)

シンドローム×エモーション (電撃文庫)

  • 作者:本田壱成
  • 発売日: 2016/09/10
  • メディア: 文庫

「そんな文句に騙されやしないさ、美里は。聞こえが良いだけの絵空事だ」

「ボクらが語っているのは、理想だ。聞こえが良いのも、絵空事なのも当然です。重要なのは、それを実現する意思がボクらにはあるということですよ」

ああ、と環は思う。心の中で、憎々しげに呟いた。

(知ってるよ。だからこそあんたらは厄介なんだ)

突然の睡眠と“正夢”(コネクト)をもたらす奇病,スノウホワイト・シンドロームの蔓延によって“覚醒者”(コネクター)たちが誕生して8年.その後にもたらされた大災害“悪夢の日”(ミラージュ・デイ)を経て社会は大きく変容していた.覚醒者の保護・管理を目的とする治安維持組織Seventhに所属する千歳環は,目覚めたばかりの覚醒者,ニコラ・ベイカーと出会う.

条件(トリガー)結果(エフェクト).乖離した二つの事象を問答無用に繋ぎ合わせることから“覚醒者”(コネクター)と呼ばれる,世界に居場所のない者たちの戦いを描く.作品にSF傾向が強い作者だけあって,いわゆる異能を使ったアクションも,理屈を付けつつきっちり描いていると思う.望まない力を手にして世界から否定される者たちのキャラクターの個性づけや口癖も特徴的.2時間の映画を見たような気分になれる,良質なアクション小説でした.ラストは唐突でびっくりしたけど.どこかで伏線あったっけ?