牧野圭祐 『銀河鉄道の夜を越えて ~月とライカと吸血姫 星町編~』 (ガガガ文庫)

思えば、「生きたい」と強く願ったのは、破滅の危機が叫ばれていた頃だけだ。危機が薄れていくほど、生への切実な想いも風化していった。

時は1964年,場所は極東の島国にある星町.高校二年生のミサは,星祭りの夜に美しい少女に出会う.彼女はこの町に転校して以来,一度も登校していない同級生のアリアだった.

声劇脚本をもとにした「月とライカと吸血姫」のスピンオフとなる,二人の少女の出会いと別れの物語.「声劇」という文化を知らなかったのだけど,ライブの幕間の朗読劇みたいなものかな.今から半世紀以上も前,人類が月に降り立つ前.宇宙に憧れる孤独な少女と吸血鬼の少女は銀河鉄道に乗って太陽系へ旅立つ.ジュヴナイルらしい雰囲気に満ちた,落ち着いた中編だったと思います.