紙城境介 『継母の連れ子が元カノだった4 ファースト・キスが布告する』 (スニーカー文庫)

だって、これは、傷を切り開くようなものだから。

治りきることもなく、かさぶたのまま私の心にぶら下がっている傷を、無理やり引っ剥がすようなものだから。

それでも、私が、私たちが、未来に進むためには――

――初恋という名の傷を、受け入れなければならない。

きょうだいとしての生活も板についてきながらも、「あの頃」の思い出を引きずっていた水斗と結女。夏休みも半ば、一家は伊理戸家の実家に帰省する。元カレと元カノとして、きょうだいとして新しい関係を受け入れたふたりに、三度目の夏祭りが訪れる。

ふたりが出会い、恋人になったこと。それは運命だった。元カップルが過ごす田舎の夏休み、夏祭り、花火を描く第四巻。今回は、結女の視点から語られるシーンを多くしているのかな。元カレの実家という、アウェーにして自分の知らない水斗のルーツがある場所で、ズルズルと気持ちを引きずる結女の語りは心に来るものがある。そんな気持ちを振り切って、二度目のファースト・キスと、新しい幸せを手に入れることを布告した結女の、ふたりの行く末はどっちだ。とても良いものだと思います。


椅子取りゲーム、早い者勝ち。

たまたま早く出会っただけ。

大いに結構。上等だ。

だって――きっとそういうのを、運命と呼ぶんだろうから。