筒城灯士郎 『世界樹の棺』 (星海社FICTIONS)

世界樹の棺 (星海社FICTIONS)

世界樹の棺 (星海社FICTIONS)

わたしはさっきよりももう少し考えてから、答え直してみた。「もしも外部的な要因ではなく、内部的な要因――つまり人類の行動の結果によって、人類が滅びるとしたら、それは正義みたいなものではなく、自己矛盾によるものかもしれません」

ここは美しく小さな小国。恋塚愛埋は、その王城でメイドとして仕えていた。この国の端に存在する〈世界樹の苗木〉は中に街があり、そこで旧文明時代の〈古代人形〉たちが暮らしているのだという。

巨大な世界樹の苗木に設置された聖堂。その棺に眠る秘密とは。世界樹の街で起こった密室殺人事件。殺したのは、殺されたのは人間か、それとも人形か。メタフィクション的な手法も使いつつ、異世界ファンタジーや館ミステリやロボット三原則や百合やあれやこれやを取り入れた全部盛りの「ファンタジー×SF×ミステリー巨篇」。それぞれのテーマはかなり古くからあるもので、作者の嗜好がなんとなく透けて見える。換骨奪胎してエンターテイメントにしているのは見事だし、パーツは面白いんだけど、(作者が自ら言うように)かなり構成がとっ散らかっており、全体を貫くものが弱いというかわかりにくいかなあ、という気がした。リーダビリティはとても高いし、読んでる最中はひたすら楽しかったです。